*** ぬくもりに触れて








誠凛高校バスケ部のマネージャーになって半年、どうにか仕事も覚えてきたけど、まだまだ上手く出来ない。みんなには、ホント申し訳ないって思うけど、メンバーはホント優しい人たちばかりだ。まぁ、メンバー自体も、まだまだやっと結成して一年だし、二年生になって、下に一年生の頼もしいメンバーも入ってきて、やっと部として乗ってきた、ってところだろうか。


にしても、リコちゃんは、ホント、よくやるなぁ、と思う。あのやんちゃで個性的な男の子たちを相手に、いきなり服を脱げ、だの、はい、コート50周ね、だの、とにかく女の子なのにちゃんと監督として立派にしきってる。わたしなんかただのマネージャーだから、ドリンクとかタオルとか用意したり、後はリコちゃんに言われた練習メニューを記録して整理して、それから試合記録とかを整理したり。とにかく言われたことを言われたようにこなしていくだけ、って感じだし。わたし、本当にみんなの役に立ててるのかな。


わたしがマネージャーになったきっかけは、今はキャプテンの日向くんの彼女だったから、だと思うけど。実際どうなんだろう。ちょうど、インターハイ予選で残念な結果になって、木吉くんが入院してから、何となくメンバーが気持ち的に前を向かなくなって、そんなとき、日向くんから声が掛かったんだ。何でわたしなんだろう、って今でもよく思う。もっと気の利く子なら他にもたくさんいるのに。わたしが一番身近で手っ取り早かったから、とか。まぁ、わたしとしては、近くで日向くんの雄姿をいつも見られるのはとても嬉しいことだけど。後は、リコちゃんともそれなりに仲が良かったから、かな。リコちゃんとは一年生の時同じクラスだったし。まぁ、そもそも日向くんとリコちゃんは中学の頃からお互いよく知ってるみたいだし。いいなぁ。わたしは高校からの知り合いだもんなぁ。


そんなことを考えていると、みんながドリンクを取りに来た。お疲れ様〜、と言いながらドリンクの入ったかごを持っていこうとしたら......


ドタッ......!


ものの見事に、ベタっと転んでしまい、ドリンクのボトルはかごから落ちてコロコロと四方八方へ。


あちゃーっ。またやってしまった。


半泣き状態になりながらボトルを拾っていると、みんなが、大丈夫っすよー、自分のは自分で拾いますよー、って言ってくれて、みんなで手伝ってくれた。ところが、日向くんは、リコちゃんと何か話しているようだった。はぁ。何か、こういう時って、ちょっと残念な気分だ。ま、でも日向くんって、公私混同しないタイプだし。人前で助けてくれるとか、、、してほしいけど、しないだろうしなぁ。
少し寂しい気持ちになりながらも、わたしはわたしで、タオルを渡したり、飲み終わったボトルを回収して補充したりと、せっせせっせとマネ業に勤しんでいた。


それから、汚れたビブスを洗おうと、洗濯をしに持って出たところで、下が見えず段につまづいてまたまたビブスをばらまいてしまった。何だか今日は、本当についてない。いや、いつもそうなんだけど、今日は何となくナーバスになってんのかなぁ、落ち込むなぁ、そう思いながらビブスを拾って運ぼうとしたところへ、日向くんがやってきた。


「よう。いつもすまんな。お疲れさん。」

そう言って、肩をポンっと叩いてくれた。その反動か何か、目からは予想外のものが溢れてきた。当然、日向くんは、何、どうした、と聞いてくる。わたしは、首をブンブン横に振って、うううん、大丈夫、何でもない、と言うことしか出来なかった。


「大丈夫な訳ないだろ?なんだ。何かあったのか?」
「えへへ。大丈夫。つまづいてばらまくのなんて、いつものことだし。」
「・・・・・・本当に大丈夫か?何かあるんなら言えよ?」


本当は何も言うつもりはなかったのだけど、日向くんに心配かけたくなかったし、でも、なぜか気持ちとは裏腹に、言葉が口をついて出ていった。


「ごめん......笑わないでね。何かわたしって、ドジばっかやってるから、あんまりみんなの役に立ててないんじゃないかって思って。リコちゃんみたいにしっかりしてればいいんだけど、わたしなんかじゃ全然頼りにならないし......」


すると、日向くんはわたしに近づいたかと思ったら、腕でわたしの頭を自分の胸に引きよせ、わたしの頭に自分の顎をのせて、小さく、だアホー、と言った。


、お前は十分、役に立ってる。お前の笑顔にみんな救われてるんだ。お前がいてくれるだけでみんな気持ちが安らぐんだよ。メンタル的にも十分役に立ってる。今、うちの部にはお前がいてくれなきゃ困る。」
「日向くん......」
「・・・・・・みんな、そんなお前の良さが分からない奴らじゃねぇよ。」


手伝おうか?って言ってくれたけど、大丈夫、と言って日向くんの背中を押した。その後後ろから日向くんに近づいて彼のシャツを引っ張りながら、

「日向くんありがとう。元気出てきた。わたしもわたしなりに頑張るから。」


そう言ったら、おぅ、と言って振り返って、大きな手でわたしの頭を優しく撫でてくれた。





fin

by ゆかり 2012/05/02







《つぶやきという名のあとがき》

初日向くん夢です。
一回書いてみたいと思ってたので、完全に自己満足の作品です。
日向くんに”だアホ”と言ってほしかった、それだけです^^ゞ
誠凛っていいですよねー。あの何とも言えない和やかな感じが好き。
もちろん、やることはちゃんとやってますけどね。またそこがイイ♪

ということで、いかがでしたでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
陳謝。


※ちなみに、同じヒロインで、相田リコちゃんとの友情話「sincerely」とリンクしてます。(2012/05/14)