遠くから、見ていられるだけで、いいのだけれど...



今、貴方は、どこにいるの?







***Where are you







今日も不二くんは、いつもの笑顔を振り撒いていて...


不二くんの席は、真ん中の列の、前から3番目。


男女、交互に座ってるので、当たり前なんだけど、不二くんの前も後ろも右も左も、その席は女の子。


まぁ、当然それは、わたしにも言えることなんだけれど。



わたしは、不二くんの左隣の列の、後ろから2番目の席。
でも、黒板を見る時、先生を見る時、必ず視界に不二くんがいる。
秘かに彼に思いを寄せているわたしには、最高のポジションだ。
わたしからの視線も気にされずに済むし、逆に、時々気にはなるけれど、不二くんが近くの女の子とお話してる時でも、何も聞こえないのが却って良かったりする。
だって...内容を気にしだしたらきりがない。
だから、聞こえないくらいがちょうどいい、って思ってる。
でも、やっぱり、近くの席って羨ましいな〜。
だから、わたしは、勝手に想像する。
不二くんが、消しゴムを落としたら、拾ってあげる。まぁ、きちんとした不二くんのことだから、ほとんどないだろうけれど。
それから、分からないところがあったら、こっそり聞いてみたり。
それから、プリントが来たら回してあげて。
逆に、不二くんからプリントが回ってきたら、笑顔で「ありがとう」って言って受け取ったり。


そんなことを考えているうちに、業間休みに。不二くんは、卒アル委員の女の子とお話をしている。
・・・そっか。もう、そんな時期なんだね。
不二くんは、写真を撮るのが趣味だとかって聞いたことあるし、卒業アルバムには、不二くんが撮った写真も載るのかな。


すると、不二くんは、席を立って廊下へと出ていった。そしてそこで、隣のクラスの卒アル委員の女の子とお話しし始めた。


こうして見ていると、不二くんって、結構いろんな女の子とお話しするんだな〜、なんて思ったりする。
2、3日前には、女テニの女の子ともお話してた。ま、それも、特別変なことでもないけれど。

不二くんと、ほとんど、と言ってもいいくらい、接点のないわたしとしては、彼女たちが羨ましい存在だ。
だからといって、決して妬んだりはしないけれど。だって、それは仕方のないこと。
わたしにとっては、唯一、同じクラスで居られる、っていうことだけでも、とってもラッキーだ、って思ってるし。
・・・まぁ、正直、羨ましいのは羨ましいけれど。
一度でいいから、お話してみたいな、っていうのは、もちろんある。
でも、今はとりあえず、このくらいでいいな。
わたしと不二くんの心の距離みたいで、うん、ちょうどいい。





そんな中、事態は急展開を迎えた。




席替えをした。

今度は、残念ながら、席が離れてしまった。
わたしは、廊下の窓際の席の前から4番目。不二くんは、反対側の窓際の後ろから2番目。
わたしの席からすると、一列後ろの、端の席になってしまった。
これじゃ、ちょっと授業中に盗み見(ちょっと言い方がヘンだけど)するのも、難しいかな。
と、思っていたけれど、考え込むフリをして、ちょっと横を見れば、少しだけ視界に入ってくる。
当然、以前のようには見られないけれど、でも、少しでも見られるから、何だか嬉しかった。


そんなある日の昼休み。
これを小春日和というのだろう。寒い冬空なのに、珍しくその日はぽかぽかしていた。
何となく外に出たくなって、いつも一緒にいる友人たちとは離れて、人気の少ない中庭のベンチに腰掛けて、ぼ〜っとくつろいでいた。
小さい池の鯉が、ポチャンと跳ねる。
なんか、平和だなぁ、と思いながら、綺麗に流れる雲を目で追っていた。

そういえば、不二くん、いつもクラスで菊丸くんとお昼を食べた後、そのまま菊丸くんの話を聞きながら本を読んでるのに、今日はいなかったな。どこにいるんだろう。ひょっとして、テニスの関係かな。手塚くんのところとか。


すると、突然、目の前が真っ暗になった。

あまりにも突然過ぎて、言葉が出ない。

え?何々?、と、わたしは固まってしまった。



「さぁ。だ〜れだ。」

え゛―――――?

どうも、わたしは、目隠しをされたらしい。
そして、その主は、声を出さずに、わたしに答えを求めてきた。


そ、そんなの、わかるわけないじゃん!!!!!


でも、何かしないと、離してもらえそうにないような、直感的にそう思ったので、とりあえず、聞いてみることにした。


「あ、あの、手を触ってもいいですか?」

「いいよ。」


一応、どうにか了解をもらえたので、上から軽く押さえるように触ってみる。

ん〜、女の子にしては、ちょっとごつごつしているような...でも、男の子の知り合いで、こんなことする子、いたっけ?
わたしは、記憶の中を奥へ奥へと辿って、思い当たる人物を探してみた。
でも、なかなか思い当たらない。

「ひょっとして、菊丸くん?」
「ちがうよ。」
「西野くんかな」
「はずれ」
「えっと、中村くんとか」
「ざんねん」


困った。
なかなか、外してもらえそうにない。
どうしよう、と思ったところに、後ろからクスクスッ、という笑い声。
あれ...これって、どこかで聞いたことがある。
え?ひょっとして、ま、まさか......!


「あの、間違ってたらごめんなさい。ひょっとして、不二くん?」

すると、目の前が解放され、眩しい光で目がくらむ。
そして、後ろを振り返ると、正解を示す優しい笑顔が。

「フフッ。やっと当たったね。当たらないんじゃないかと思ってちょっと心配しちゃった。」

またしても、あまりにも意外な人物の登場に、わたしは言葉を失ってしまった。

「クスクス。ごめんね、さん、驚かせちゃって。あまりにも君が空を凝視してるから、驚かせたくなっちゃったんだ。」

「えっと、あの...」

「この前、席替えしたよね。さんと離れちゃって、僕ちょっと残念でさ。」
「え?」
「でも、今度は僕の席からだと、右を向けば、ちょうどさんが見えるんだよね。」
「う、うん。」
「前の席の時、後ろから君に見られてるかと思うと、ちょっとドキドキしちゃってたりしてね。」
「え?ふ、不二くん。」
「今回は離れちゃったけど、次の席替えでは、さんと近くになれると嬉しいな。」
「不二くん...」
「フフッ。今日はいい天気だよね。」

僕も隣に座ってもいい?と不二くんは言って、わたしの横に腰掛けてきた。
それから、二人で空を眺めて、雲の話をしたり、池の鯉が何匹いるとか、たわいのない話で昼休みを過ごした。
わたしにとっては、忘れられない日になった。

あれから、不二くんは、時々わたしの方を見てニコッ、としてくれるようになった。
だからわたしも、笑顔で返す。
時々天気のいい日には、昼休みに中庭でお話をすることも多くなった。



そして......


次の席替えで、わたしは不二くんの隣の席になった。








fin

by yukari 2011/12/13














《つぶやきという名のあとがき》

2時間足らずで、一気に書き上げました!

イメージは、タイトルの通りで、(って分からんし!)
西野カナさんの同タイトルの曲を聴いてて、思い付きました。
彼女の曲は、もっと切ない感じなんだけれども、
夢小説の場合は、もっと前に向かったものにした方がいいかな、と思い、
こんな感じで仕上げてみましたが、いかがでしょうか。

目隠しにしたのは、もう何度も動画で見た、「ドキサバ」のワンシーンです。
"どこだ"っていう感じを出したいな〜、と思ったら、このシチュエーションが浮かんできました。
確か「ドキサバ」の場合は、ちゃんと下の名前を言わないと離してもらえないのだけれど、
ま、さすがにそこまでは、、、出来ませんでした^^;

にしても、不二くんって、結構おちゃめなところありそう!
こと、気になる女の子に対しては、特に、ね^^

いやぁ、、、でも、ちゃんと仕上げたの、かなり久しぶりで嬉しい。
ちょっと、自己満足^^♪

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
陳謝。