これと一緒に
この想いも届けばいいのに...
*** こっちと向こう
はぁ......退屈...
今日で三日目。大した熱でもなかったのに、お母さんが休め、っていうから、仕方なく家で大人しくしていた。
ま、確かに、咳は結構ひどかったから、しようがないと言えばそれまでだけど。それよりも残念なのは、隣の席の黒子くんに会えないことだ。今、何の時間だっけ。体育かなぁ、あ、今お昼かぁ、とか、考えることしかできない。つまんない。
翌日、学校へ行くと、久しぶりの教室、久しぶりの匂い、何だかちょっと新鮮な気がした。そして、自席の机の上に自分のカバンを乗せた時、「さん」と自分を呼ぶ声。隣の黒子くんだ。
「おはようございます。」
「おはよう。黒子くん。」
「風邪の方は、もう大丈夫ですか?」
「うん。ありがとう。さすがに三日も寝たら、すっかり元気になったよ。」
と言いながら、わたしはガッツポーズをしてみせた。そしたら、黒子くんが少しだけいつもより微笑んでくれた。そして、ちょっと待ってください、と言って、黒子くんは自分のカバンの中をゴソゴソと何かを探している風。何だろう、そう思っていたら、
「はい、さん。良かったら使ってください。」
そう言って差し出されたのは、結構新しいノート。不思議に思って開けてみたら、、、この三日間の授業の分が、綺麗に整理されて書かれていた。
「・・・えっと、黒子くん?」
「さんが休んでた間、まとめてみました。参考になればと思って。」
「え?いいの?」
「はい。良かったらどうぞ。」
「ありがとう。すっごく助かるかも。」
それはよかったです、と言いながら、黒子くんは自分の席に座った。よくよくノートを見てみると、とっても丁寧な字で書いてある。黒子くんって、字、上手なんだぁ、と思いながら、早く写してしまおう、と、休み時間もそっちのけで、黒子くんから借りたノートを一生懸命書き写していた。
帰り道、いつものように横断歩道を渡って、ふと、黒子くんにノートを返していないことに気づいて、今からでも間に合うかな、と振り返ったら、道路の反対側にちょうど黒子くんがいた。ぅわぁ、ちょうど良かった、と思って、わたしは思わず、
「黒子くん、これー」
そう言いながら、わたしは、黒子くんから借りたノートを振り回しながら叫んだ。すると、黒子くんは、手で大きく「○」を作って示してくれた。
なるほど。黒子くん、大きな声出すの、苦手そうだもの。ジェスチャーで応えてくれるってわけね。そう思ったわたしは次に、「これ、いるよねー」と聞いてみた。すると、黒子くんは、今度は、手で大きく「×」を示した。
わたしは、え?、と思い、どうしてだろう、使わないのかな、と思ったので、今度は、「でもこれ、使うよねー」と聞いたら、またまた「×」。わたしは、訳が分からず、次に「これ、黒子くんのでしょー?」って言ってみた。すると、上手に「△」を手で大きく作った。ん?、三角???そう思ったとき、信号が変わったので、わたしは、黒子くんの方へと走っていった。
「黒子くん、三角って......?」
「これは、キミにあげたので、もうこれはさんのです。」
「え?でも、これ新しいよ。もったいないじゃない。」
「はい。だから、キミがそのまま続きを使ってください。僕は大丈夫です。」
黒子くんは、そう言ってくれるけど、書かせてしまった上にもらっちゃうなんて、何だかとっても申し訳なかった。
「・・・・・なんか、悪いよー。」
「いえいえ。ちょうどいい復習になりましたから。ほんとに、気にしないでください。」
「でも......」
すると、何かを思いついたように、黒子くんが、あっ、と言って、
「じゃあ、今度またどちらかが休んだら使う、ってことでどうですか?」
「んー、そうねぇ......じゃ、お互いに、復習しながら、写し合う、ってことね。」
「はい。だったら無駄にはなりません。今からでも使えますよ?」
「そうね。うん。じゃあ、そうしよう。」
「だったら、これ、さんが持っててくれますか?学校の机の引き出しに入れててください。もしまたさんが休んだら、僕が机から出して書いてあげます。」
「うん。ありがとう。じゃ、今度から大切に使わせてもらうね。」
でも、家に帰ってからいろいろ考えて、わたしはどうしても黒子くんに何かお礼がしたくて、その言葉を、そのノートに託すことにした。
”黒子くん、ありがとう。とっても助かりました。
今度、黒子くんが休んだ時は、わたしが頑張って書くからね。
”
すると、黒子くんから、返事が戻ってきた。
”さん
お役に立てて良かったです。
僕も、さんにしてもらえれば、心強いです。
よろしくお願いします。
黒子”
それから、また返事を書いたり戻ってきたり、と、いつしか、それは、二人の交換ノートのようになっていった。
fin
by ゆかり 2012/05/17
《つぶやきという名のあとがき》
何か、かなり強引な終わり方でごめんなさいっ(;´Д`)
てか、”交換ノート”なんて、今時しないよねー。。。
でもそれが、逆に新鮮?かも。。。
ってことないか。。。^^ゞ
す、すみません。。。古くて。。。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
陳謝。
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