ずっと遠くまで、続く景色がとってもきれい。
あなたと一緒に見られるって、わたし、幸せだな。。。
*** ゴンドラに乗って
「じゃあ、次は、コーヒーカップ乗ろ!」
わたしは、テツヤくんの手を引っ張って乗り場の列へと近づいた。
今日は、テスト開けの日曜日。テツヤくんも、試合も練習もないから、ということで、一緒に隣の市の遊園地に遊びに来ている。
日頃、クラスも離れてるし、一緒には帰ってもそんなに長時間話せるわけでもない。このテスト期間中も、2、3日一緒に勉強したりしたけど、毎日とはいかなかったし。テツヤくんもバスケの試合とかで結構忙しいから、なかなかゆっくり話せるときがない。わたしは、手芸部だから、そんなに大した行事もないしで、融通は利くんだけど。だから、めったにないこの機会、存分に楽しみたい、って思ったから、ちょっと足を伸ばして、ちょっぴり渋ってたテツヤくんを半ば強引にここまで連れてきた。
元々あまり感情を表に出すタイプじゃないけど、始め、”遊園地に行きたい”ってわたしが言った時は、すっごく嫌そうな顔をしたテツヤくんだったけど、ここまで来て、あちこちわたしが連れまわってるうちに、だんだんその気になってきたのか、「あれって、どういう乗り物ですか?」とか聞いてきたりするようにまでなった。テツヤくんなりに楽しんでるみたいで、わたしもホッとした。一緒に来て良かった。やっぱり大好きな人と一緒に来るのは、友人とくるのとはまた全然違って、ワクワクドキドキして、テツヤくんの反応とかも見れて、それがまた新しい発見もあったりして、とっても面白くて楽しい。わたしって、顔、緩みっぱなしだろうなぁ、なんて思うけど、嬉しいんだからしようがない。テツヤくんと一緒に、手を繋いであっちへこっちへと園内をぶらぶらするのは、すごく幸せな気分だ。テツヤくんもまんざらでもないようだし。やっぱり来て良かった。
お決まりのジェットコースターに乗ったところで、何となくお腹がすいてきた。
「ねぇ、テツヤくん、お腹すかない?」
「そうですね。僕もそろそろお腹が鳴りそうです。どこかお店に入りましょうか。」
「・・・あ、あのね、わたし今日、お弁当作ってきたんだ。」
「え?あぁ、それで、あの荷物、ロッカーに入れてたんですね。」
「えへへ。そうなの。だから、ちょっとそのベンチにでも座って待っててね。お弁当取ってくる。」
「分かりました。気を付けて。」
それから、お弁当をロッカーから持って来て、わたしたちは、乗り物から少し離れたところにある、池の周りの芝生に座って、昼食を取ることにした。敷物を敷いて、お弁当を広げる。ふぅ、テツヤくんに食べてもらうって、ちょっとドキドキだなぁ。反応がちょっと怖い...
「ぅわぁ。こんなにたくさん。一人で作ったんですか?」
「えへへ。ちょっと張り切りすぎちゃったかなぁ。」
「いや。凄過ぎでしょう。サンドイッチにおにぎり。おかずもたくさん。美味しそうです。」
「テツヤくんの好みに合うかどうか、分からないけど、はい、どうぞ。」
そう言いながら、わたしは、お皿におかずをとってあげて、テツヤくんに割り箸と一緒に渡した。
いただきまーす、と言って、テツヤくんは、始めに、ほうれん草のおひたしを口にした。
「美味しいです。さん、上手ですよ。」
「ホントー?良かったー。何て言われるか、ドキドキしちゃってたよ。」
「すっごい早起きして作ったんでしょう?」
「あはは。えっとね、ちょっとワクワクし過ぎて、なかなか寝れなかったんだ。だから早く目が覚めちゃって...って、いや、元々早く起きようとは思ってたんだけどね。それよりも早く目が覚めちゃったんで、ちょっと頑張って作ってみたの。さ、さ。食べて食べて。」
「・・・・・さん、嬉しいです。」
「え?」
「こんなに一生懸命作ってくれて。僕、感激しちゃいました。ありがとうです。」
「あ、い、いや、そ、そんな。て、照れるじゃない...だ、だって、テツヤくんのためだもの、わたしだって、頑張っちゃうよ。」
「フフ。じゃあ、そのさんの気持ちも一緒にいただきます。今度はこの卵焼き......んー、この甘さ加減がちょうどいいです。」
じゃ、次は、などと言いながら、確かテツヤくんってそんなに大食いじゃなかったような、とは思ったけれど、でも、結構たくさん食べてくれてわたしもとっても満足。もちろんわたしも一緒に二人で全部平らげた。
ほのぼのした昼食の後、一緒にゴーカートに乗った。これがまた、とっても気持ち良くって楽しかった。森の中をぐるっと一周回るようになってて、二人でキャーキャー言いながら爽快感を堪能した。
それから、あれやこれやと乗りまくって、途中でシェイクを飲んで休憩したりしていたら、だんだん日が陰ってきた。もう一つ、目的の乗り物を見つけて、テツヤくんを誘った。
「テツヤくん、観覧車、乗ろ。あの上から見る景色、すっごい綺麗なんだって。」
そう言いながら、わたしはテツヤくんの手を引っ張って、乗り場へと走って行き、一緒に二人でゴンドラへと乗り込んだ。
ゆっくり動きながら上昇し始める。地上からだんだん離れていく。走ったせいかちょっと疲れて、二人で向かい合わせに座りながら、一緒にホッと一息ついたので、お互いに目が合い、顔を見合わせながらクスッと笑い合った。
空が近づくにつれて、二人っきりなんだ、というのを少し意識させられる。何となく気恥しくなって、わたしは出来るだけ外の方へと目を向けるようにして、下の方を見たり、反対側のゴンドラを見たりしていたら、いつの間にかテツヤくんがわたしの隣にきていた。すると、わたしは外を見ていたので、テツヤくんに背中を向けていたら、後ろからギュ―ッと抱き締められた。
「テ、テツヤくん。他の人に見られちゃうよ...」
「大丈夫ですよ。見られても構いません。」
「・・・・・え、えっと・・・」
「やっと、二人きりになれましたね。早く君とこうしたかった。」
「テツヤくん......」
「始め君がここに来たいって言った時、僕、ちょっと渋ったでしょう?本当は君と二人だけで過ごしたかったんだけど、でも今日はここに来れて良かったです。君と一緒に過ごせて、君の笑顔をたくさん見れて僕もとっても楽しかった。」
「・・・・・うん。良かった。そう言ってもらえて、わたしも嬉しい。」
「今日のさん、とっても可愛かったです。」
「テ、テツヤくん...」
「さん、こっち向いて?」
そう言われて、テツヤくんの方を向いたら、ちょうど夕焼けがテツヤくんの背中側から見えて、空も薄オレンジ色に染められてとても綺麗だった。テツヤくんは、わたしを囲うようにわたしの後ろの窓に手をついて、それからゆっくり顔を近づけて自分の口びるをわたしのそれに重ねた。
fin
by ゆかり 2012/04/21
《つぶやきという名のあとがき》
大変お待たせいたしました。黒子夢upです。
黒子くんに後ろからハグしてほしい、の思いで書きました^^ゞ
でも、黒子くんとのデートも、書いてて楽しかったです。
いかがでしたでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
陳謝。
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