わたしは、貴方に一生懸命視線を送ってるのだけど...
貴方はそれに、気付いているのかな...
*** line of sight
・・・・・・・・ カ、カッコいい...
友人に言わせると、そういうわたしは、ちょっと変わっているらしい。
「わたしは、火神くんの方がいいな」とか、「日向先輩のシュート、カッコいい」とか、「やっぱり木吉先輩かな」とか、そういう話になって、どうして、あんな目立たない黒子なんかがいいのか、なんて言われてしまう始末。そ、そんなことないよっ。”あんな”って何よ、”あんな”って。黒子くんのパスってスゴイじゃない!それこそあんなの、並大抵の人の出来ることじゃないんだから!!!!!
・・・ と、いくら頑張ってわたしが主張したところで、誰も聞いちゃいない。
いいのいいの。誰も分からないって、好都合じゃない!
ライバルなんて、少ない方がいいんだから。
――― と、思ってみたものの、あまり理解してもらえないのも、それはそれで、ちょっと不安になる。
いや。でも、この場合、一人の方が案外いいのかも。わたしだけが黒子くんのこと、想ってるって、すっごくステキ...!
残念ながら、黒子くんとはクラスが違う。なので、なかなか見掛ける時が少ない。でもたまに、雨の日なんかは、体育が男女合同授業になったりする、そういう時は体育館で、だいたいバレーかバスケを一緒にやるのだ。こんな時は、めったにない。隣のクラスの黒子くんのプレーを存分に拝めるチャンスだ!
汗を拭う仕草、程よく筋肉の付いた腕、ふくらはぎ、ボールを追う視線。全てに惹きつけられてしまう。そっか。さすがに部活の時は付けてるけど、体育の時はリストバンド、付けてないんだ。あれをキュ、キュッ、って触ったりするの、見ててカッコいいんだけどなー。
わたしの視線は、黒子くんに釘付けだ。一緒に見ている友人が、わたしの視線を遮るように、わざと目の前で手を上下に振る。んー、邪魔だー、と言わんばかりに、わたしはその手を払いのける。だって、こういう時くらいしか、黒子くん見れないんだからーっ。ホント、邪魔しないでほしい。
ピーッ、と先生がホイッスルを鳴らし、黒子くんたちの動きも止まる。あぁ、至福のひとときが終わってしまった、ざんねんー、と思いながらも、次はわたしたちの番なので、仕方なく立ち上がった。
わたしは、陸上部。なので、走ることには慣れている。でも、球技は正直、出来ても小学生並みだ。体を動かすことは好きなので、一応ついてはいけるけど...どうだろ。足引っ張ってないかなぁ。ていうか、黒子くんの前だもの、下手なことしたくない。
・・・と、パスが回ってくる。一応ドリブルしてみるけれど、周りを見ながらなんて器用なことは出来ないので、思わず立ち止まってしまう。すると、もう、後はパスを回すしかない。ボールを持ってキョロキョロしていると、バン、とボールは弾かれ、思いっきりカットされたことに気付く。そしてボールは、簡単に相手へのボールと渡ってしまった。
ごめーん、と片目をつむりながら、両手を合わせて味方の友人に詫びを送る。ドンマイ、っと友人は肩を叩いてくれた。はぁ...もうちょっと上手くパスが回せれば...そう、黒子くんのように。そう思いながらふと目線を上げると、そこには黒子くんが。しかも、こっちを見ている。ゲッ、こんなところ見られちゃった。恥ずかしいなぁ、と思いながらわたしは目を逸らして、ボールの行方を追った。
気を取り直して、味方に合図を送る。すると、またパスが回ってきた。今度は上手く...と、ドリブルをしながらゴールの方へと向かう。ゴール下に味方が見えた。走りながら、えいっ、とパスを投げる。すると、どこからか相手の子が飛んできて、またカット。ふぇ...はぁ、なかなか上手くいかないなぁ。と、また思わず無意識にギャラリーの方へと見やったら、また黒子くんと目が合った。ぅわっ、と思ってすかさず顔を下に向け、そのまままたボールの向かった敵陣のコートへと足を運んだ。
ちょっと気になって同じところを振り返って見たら、やっぱり黒子くんはこちらを見ている。これって、偶然?てか、ひょっとしたら、わたしのことじゃないかもしれないし、わたしだけじゃないかもしれないし。き、気のせいだよね、とちょっぴり焦りつつ、またボールの方へと意識を向けた。
わたしの活躍(?)は置いといて、味方の友だちはみんな結構頑張ったので、点もたくさん取ったのだけど、残念ながら僅差で負けてしまった。ま、でも、楽しかったな、と思いながら、友人たちと、疲れたねー、と声を掛け合ってコートから下がった。タオルで汗を拭いて一息ついた後、喉が渇いたので、わたしは、ちょっと水飲んでくる、と言って、体育館の外の水飲み場へ向かった。
誰もいなかったので、水を飲んだ後、顔も洗った。ふぅ、と息をついて、タオルで顔を拭いていたら、「お疲れ様」と声を掛けられた。・・・・・何だかどこかで聞いたような・・・男の子、にしては、ちょっと高めの声?・・・そう思いながらタオルを外して顔を上げると......え?うそ!なんで黒子くん???
「さっきの試合、頑張ってましたね。お疲れ様です。」
「・・・あ、えっと、わ、わたし・・・?」
「はい。何度か目が合ったでしょ?さんのこと、ずっと見てましたから。」
「・・・え?わ、わたしの名前・・・・・・」
「えぇ、知ってますよ。隣のクラスの、さん。」
「・・・く、黒子くん・・・?」
「さんも。僕のこと、見過ぎですよ。」
「え?」
「気になって、緊張して、プレーしにくかったです。ま、嬉しいですけど。」
「え、う、嬉しいって...あ、でも、それは、黒子くんだって―――」
「お返しです。」
「え?お、お返し...」
「はい。でも、ちょっと励みになりませんでしたか?僕もそうでした。」
「く、黒子くん...」
「見られてる、と思うと、逆に頑張ろう、って思いません?」
「え?や、ど、どうかなぁ...」
そう言いながら、わたしが首を傾げたら、黒子くんが、わたしの手を取って、自分の両手で包むように挟んだ。
「ちょっ、く、黒子くん?」
「君なら歓迎です。」
「え?」
「もっと僕のこと見てて下さい。僕も君のこと、もっと見ていたい。」
「・・・・・黒子くん・・・」
そうして、黒子くんは、わたしの手を握る手に、少し力を込めた。
「少しずつでいい。君のこと、知って行きたいんですけど、いいですか?」
fin
by ゆかり 2012/04/21
《つぶやきという名のあとがき》
うっしゃ。黒子夢、続けて2作目upです^^♪
黒子くんは、それでなくても、意識を自分から遠ざけるのがお得意なのだから、
やっぱり視線を逸らさないように見続けないと、
すぐいなくなっちゃいそうで。。。でも、
好きならすぐに、見つけられちゃうかなぁ。。。^^ゞ
ちょっとした一コマが書きたかったのでこんな感じに。。。
いかがでしたでしょうか。。。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
陳謝。
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