>
はぁ......
今日、何度目かの溜め息をこぼす。
やってもやっても追い付かない作業。
友人の誘いを断って、四時間目が済んですぐに、
ここ、生徒会室へ来たけど、
・・・・・・・・もう!全然すすまないじゃん!!!!!
あの、くそ、アホベめ〜〜〜っ!
なんて。本人の前じゃ、口が裂けても言えないけど。
いや、裂けたら痛いし、ヤだから言わないけど。
あいつだって、パソコン打てるんじゃん。
ちょっとくらい、自分でやってもいいんじゃない?
最終的には、自分がチェックするんだし。
なら、初めっから、自分ですればいいのにさ......
そんなことを思いながら、文字入れの作業は続く。
何だかんだいって、跡部に甘いのは、このわたしなのかも、って思ったりする。
放っとけないんだよね。わたしのこの、世話好き(?!)な性格もあるんだろうけど、
跡部って、生徒会長とテニス部の部長も兼任してるし、
それなりに用事が多くて、すっごく忙しそうで。
頼まれると、そりゃやっぱり断れない。
つーか、わたしも例にもれず?・・・・・・思いっきり彼に惹かれちゃってるしね...
はぁ......
またどこへこぼれるとも分からないものを落としながら、
自分でドつぼにハマっていく。
時計を見ると、結構経っていた。
そういえば、お腹の虫が騒いでる気もするし。
さてさて。ここらで、休憩しますか。
と、仕方なく、お弁当を広げるわたし。
こうなることは予想がついてたから、学食じゃなく、今朝早めに起きて
自分で作ってきた。
っていうか、自分で詰めてきただけだけど。
いや。実際作ったのは自分なんだけど、
お母さん、仕事で遅いから、よくわたしが夕飯の支度をしたりする。
だから、その残り物をちょ、ちょ、ちょっと詰めてきただけ。
持参した水筒でお茶を淹れながら、ホッと一息ついた。
・・・・・・ついた、ところで、バンッ、と、すごい勢いで生徒会室のドアが開く。
びっくりしたけど、このドアの開け方は、アイツしかいない。
そう思いながらドアの方を向くと、思った通り例の彼がずかずかと入ってきた。
わたしに目をとめると、少しスピードを緩めながら、こっちの方へ近づいてきた。
「お前、何やってんだ?」
「は?何じゃないでしょ!あなたがわたしに頼んだんじゃない!もう、
おかげでこっちは休憩なしで、おまけに弁当持参で頑張ってるんだから!」
「そんなにあったか?お前、トロトロやってんじゃねぇのか?」
誰のせいで......と、爆発しそうな思いをひたすら鎮めながら、左側に積んである書類の山を
ボンボン、と叩いて見せる。
一瞬とまどったのか、少〜しひるんだ素振りを見せたけど、何をどう思ったのか、
わたしの頭を、ぐしゃっ、っと一撫でして、そか、そりゃ悪かったな、と言いながら、離れていった。
ちょっと、今、触られた頭を意識しつつも、天の邪鬼なわたしは、
本当に悪い、なんて思ってんのかしら、とブツブツ言いながら、再びお弁当の中へと箸をつける。
跡部は、というと、生徒会室に備え付けてある小キッチンで、何やらごそごそやっていた。
いつもなら、わたしが何か入れてあげるんだけど、と思いながら、もう今日はとてもじゃないけど、
そんな気分になれず、勝手にやって、と思い、ひたすら食べ物を口に入れていく。
だって、早く食べないと終わんないし。てか、これ、今日中に終わるんだろうか...
ちょっとどんよりしたものを感じながら食べていると、跡部がいつもの高級そうなMy湯呑みを持ってやってきた。
そして、近くにあった椅子を寄せてきて、わたしの隣に座った。
「どのくらい進んだんだ?」
「これの3分の1ってとこかしらね〜」
と言って、半分嫌味のようにまた横の書類の山を叩く。
ちょっと考え事をしていたのか、いくらか間があって、ふと、視線が、わたしの弁当箱へと移動してくる。
と思ったら、ある物を指差した。
「これ、何だ。」
「え?肉じゃがよ。」
「美味そうだな。ちょっとくれ。」
と言って、他のものに刺してあった楊枝を取り、肉じゃがのじゃがいもに突き刺して、パクッと跡部の口の中へ。
ぅわっ。なんか、カワイイかも...
楊枝、とは言っても、まさにカワイイ、ピンクのうさぎの模様のついたミニピック。
似合わね〜、と思いながらも、ちょっと貴重な物を目にした気分になって、少々浮かれ気味になるわたし。
でも、わたしは、特に気にも留めてない素振りをして、ひたすら他のおかずにパクつく。
「これ、お前が作ったのか?」
「まあね。」
「ふうん。お、これは、おひたしか。」
とか言いながら、またうさちゃんの楊枝で刺して口の中へ。
「どうしたの?跡部、もう済ませたんでしょ?ていうか、こんな庶民の食べ物なんか、
跡部の口には合わないんじゃない?」
そんな嫌味な言葉も、この男には通じるはずもなく、まぁ、分かってたけど。
跡部は跡部で、また次のおかずへと楊枝を伸ばす。
「。お前、料理上手いんだな。」
「まぁ、それはそれは。光栄です。」
なんて言いつつも、内心ではちょっとドキドキしながら、わたしは恭しく頭を下げた。
だ、だって。あの跡部が、わたしのお弁当、っていうか、料理を誉めてくれてる。
フッ、可愛くねぇなぁ、と言いながら、わたしのその下げた頭を、今度は優しく撫でてくる。
ちょ、ちょ、ちょっと。そんなことされても、わたし、嬉しくなんかないんだからね!!!!!
で、でも、きっと顔、赤いだろうなぁ......
なんて思いながら、ふと、跡部の方を見ると、
いつものようにふんぞり返った姿勢で、肩肘ついて、わたしを見つめている。
ちょっといつもと違う、優しそうな眼差し。
だ、だめよ。そんな顔しても、わたしは、わたしは......
「フッ。何、照れてんだよ。」
「べ、べつに。照れてなんか。」
「ハッ。まぁいい。美味かったよ。ごっそうさん。」
その拍子に、わたしの背中をポンッと叩いて楊枝を元に戻した。
何だか、叩かれた瞬間に、肩の力がスッ、っと抜けたような気がした。
跡部の魔法?まさかね。てか、そんなにわたし、硬くなってた???
そんなことを思いながら彼を見ると、
跡部はパソコンの画面と書類を見比べ始めた。
「ごめん。間違ってはないと思うんだけど。」
「ん、あぁ。大丈夫だ......それより、、、」
「え?なに?」
「今はもう時間がないから、放課後にしろよ。俺も手伝う。その代わり、、、」
「え?そ、その代わり?」
「明日から、俺のも作ってくれねぇか?・・・・・・その...弁当。」
またまた、この人は、何を言って、、、で、でも、
何だか様子がおかしいんじゃない???跡部、照れてる???
いやいや、そんなことより、わたしが、跡部のお弁当を???
跡部って言えば、"フレンチ"とか"ステーキ"とか、"イタリアン"だとか...なんて思いつつも、
わたしは、次の言葉が出てこない。
「え...べ、べんとうって。わ、わたしの?」
「あぁ。」
「い、いいけど。庶民的だよ?残りものだよ?」
「・・・っ。あ゛〜〜〜っ。これ以上言わせんなよ。」
「だ、だって...」
「作るのか、作らねぇのか?」
「作りますっ!」
「よし。いい子だ。」
と、また頭を撫でられる。
何だか、いつもと調子が狂うなぁ、なんて思っていたら、
「、お前のが食べたいんだよ。」
ずっと作ってくれるか?、なんて、そんな優しい眼差しで言われたら、
そりゃ、断れるわけないでしょ!
やっぱりいいように遣われてるのかな......
でもそれからは、毎日のように、生徒会室での二人だけの時間が始まった。
fin
by ゆかり 2010/04/16
《つぶやきという名のあとがき》
跡部様、第二弾!!!!!
一気に書きあげちゃいました^^;;;
跡部様に、この前から、どうしても「肉じゃが」を食べさせてみたかった!
いろいろシチュエーションを考えてたんだけど、
書きながら、どんどん発展していきました。
面白い。面白かった。
跡部夢、すっごく書いてて楽しいですぅ^^
てか、実際、どうなんでしょ。
跡部って、"おふくろの味"とか知らなさそう......
そうだ。元々は"おふくろの味"っていう言葉を入れたかったのに。
忘れてたf^^;;;
また機会があれば。って思いっきりネタばれ?????
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
陳謝。