*** smelling










せっかくの一緒の休日なのに、生憎の雨。。

今日は二人、不二くんの部屋でゆっくり過ごしている。




BGMは、わたしの友人のおススメ”AZU”



普段、ジャズやクラッシックしか聴かない彼だけど、
このCDは何も言わず聴いてくれているところをみると、意外とすんなり馴染んでもらえたかな?



スピーカーからは、彼女のソフトでゆったりしたメロディが流れてくる。





?」




ふと呼ばれて、不二くんの方を振り向く。



「何?」




すると、一瞬、驚いた顔をしたかと思ったら途端に、ククク、ハハハ、と笑いだした。



「何よ。人のこと呼んどいて。笑うことないでしょ?」
「ククク。ごめんごめん。本当に不意打ちだったんだね。、僕のこと、全く意識の中に入ってなかったでしょ。」



........言われてみれば..


のほほんとした空気の漂う中、不二くんもわたしも、それぞれ違う雑誌を広げて読んでいた。

わたしは、ある内容が気になって、気付かないうちに思いっきり雑誌の中に入り込んでいたらしい。



「ごめん。ひょっとしてわたし、すごい、惚けた顔してた?」
「うん。すごく。」



不二くんは、全く笑みを消すことなく、こちらに顔を向けている。






「ちょっと、寂しかった、かな。」




首を少し傾げながらそんな言葉を漏らす不二くんは、とても魅惑的な感じで......

でも、一瞬でも彼を一人にしてしまったことに、心から申し訳なさが込み上げてくる。




、何読んでたの?」



え?と言おうとして横を向きかけたら、すぐ近くに不二くんの気配。



「えっと・・・・・・」



とわたしが言うのとほぼ同時に、わたしの体は、ふっと不二くんの方へ引き寄せられた。




男の子にしては、華奢な手足をしているけれど、

グッと力を込められた腕からは、やっぱり男の子なんだ、と思わざるを得ないものを感じる。





ス―――――っと、首筋に、吸い込む息の音。



このまま、吸い込まれてしまうんじゃ、なんて、思ったり。

不二くんになら、吸い込まれてもいいや、と思う私もいたり。







って、すごくイイ匂いする。」




顔を、わたしの服にくっつけてるからか、ちょっとくぐもって聞こえてくる不二くんの声。

少し掠れ気味に聞こえるのも、なんかそそられるよ。




「ふふっ。ホント?嬉しいな。わたし、香水つけるの、あまり好きじゃないから、どうかなって思ってた。」

「すごく安らぐよ。の匂いがする。」

「え?わたしの匂い?」




自分の匂いって、気付かないし、実際全く分からないけど、改めて言われると、すごく照れてくる。



わたしも不二くんのマネをして、思いっきり不二くんを吸い込んでみる。



「ふふっ。ホントね。不二くんの匂いがする。好きだな。不二くんの匂い。」

「酔っちゃいそうだよ。クラクラする。」




ふふふ、と微笑みながら、どちらからともなく、唇を寄せ合う。



ついばむような動作に、本当に酔ってしまいそうだ。







ふっと離れたかと思うと、わたしの両肩に手を置いた不二くんが、わたしをまっすぐ見つめながら、









「・・・・・・僕だけを見ててよ。」








囁くような、、、近くにいるわたしにだけ聞こえるような声で告げながら、


優しい瞳が近付いてくる。







わたしたちは、さっきの夢ごごちのような空間へ堕ちていく.....











fin



by ゆかり 2010/03/19








《つぶやきという名のあとがき》



初めて完成させた作品なので、これが処女作、ということになるのでしょうか...

一番初めに思いついた作品は、超長編になりそうなので、

じっくり温めてるというか...



午前中に車を走らせていた時に思いついたものです。

こんなに一気に書けるなんて...自分でもかなりの驚きです。



今日はこの季節には珍しくとってもイイ天気で、のほほんとした陽気なのだけど、

このシチュエイションには、雨の方がイイような気がして...

まぁ、二人でいれば、天気なんか関係ない?!((笑))

でも、ゆかりは、雨の日って好きです。

自分達だけの空間が出来そうで。二人だけの世界♪



設定は、一応恋人同士にしていますが、

年齢は特に決めていませんので、

読まれる方のイメージに合わせていただければ...!



最後までお読みいただき、ありがとうございました。

陳謝。