「かんぱ〜〜〜いっ!」

「おつかれ〜〜〜〜〜っす!!!!!」









学校近くの喫茶店を貸し切っての、今日の体育祭の打ち上げ。




今日はお天気も良かったので、みんなかなりのお疲れモード。


でも、そんな疲れをふっ飛ばすくらいの盛り上がり!









って、バスケ、上手かったんだね〜〜〜」

「へへ。小学校の時、ミニバスやってたから...」

「へぇ。なるほどね。納得〜〜!」

「じゃあ、今度から、女バスはにお任せだねっ」

「ちょ、ちょっと。それも困るし...」

「だいじょぶだいじょぶ!やっぱ、クラスマッチは、得意なのやんなきゃさ。」

「え?...いやいや...得意というか、ただの経験者というか...」

「いや、ホント、マジで、今日のは心強かったよぉ。」

「・ ・ ・ え、え?ホント?」



なんか、いっつも手芸とかお菓子作りとかしてっからさぁ、とか何とか言われ、

来年もバスケ担当みたいな決定事項を下されちゃって、

ま、盛り上がりの勢いだから、いっか、なんて、

妥協が得意なわたしは、流れでその気になってたりする。





まぁ、

クラスのみんなのお役に立てたのなら、と思いながら、

目的の人物を探していく。




少々では見つからない彼は、案の定、お得意の壁の花と化していた。






でも、

表情で、何となくだけど、彼なりに楽しんでる感じ、かな?





と、そこへ、クラスメイトが。


「おぉ、黒子!お疲れ〜〜〜」

「あ、ども。」

「ぁあ〜?オメェ、ちゃんと食べてんのか〜?今日は、せっかく俺んちの店で、

父ちゃんも母ちゃんも張り切ってんだからよ〜、

ちゃんと食ってけよ〜!」

「そうなんですか。いろいろありがとうございます。」






ふふふ。そういえば、いつだったか、マジバーガーで、

バニラシェイクだけ飲んでたっけ。

あの体つきだもの、確かに心配になるかも。






「そういえば、お前、何出てたんだっけ?」

「卓球です。」


「卓球?お前、卓球出来んのかよ。」

「いや。全然だめでした。」


「だろうよなぁ。お前、バスケでも、どこいるかワカんねぇ感じなんだろ?

ま、大丈夫大丈夫!他のやつらが、ちゃんとフォローしてくれっからよ!」

「はぁ...」




ま、とにかく、食ってけ、食ってけ、と、その体格のいいクラスメイトは言いながら、

黒子くんの肩をポンポンと叩いて去っていった。






いやいや...

黒子くんってすごいんだって!



バスケ部でも、影の立役者として、すっごい頑張ってるんだってば。



ま、わたしだけでもそれを理解してあげてればいっか!








・ ・ ・ ・ ・ わたしの長い長い片思い。


黒子くんが好きで、高校まで押しかけてきた。



でも、わたしの思いなんて、そんなに目立たなくていいんだ。



結構、ナイーブなところもありそうな彼だもの。

わたしの気持ちを押し付けてもね。申し訳ないし。



そ。

この辺から見つめてられるだけで十分♪













そんなこんなでお開きになり、

そこからカラオケに行ったり、他で寄り道したりと、

いろんなグループに分かれる中、

わたしは、何となくどこに行く気にもなれず、全てを断って、

帰路につこうとしていた。






さん。」

「あ、黒子くん。お疲れ様。黒子くんも帰宅チーム?」


「ええ。まぁそんなところです。...あの、もし、良かったら、僕に送らせてもらえませんか?」

「え?あ、いいの?かな...」


「はい。さんさえ良ければ。」







まさか、嘘のような、突然のお願いに、わたしの心臓は早くもバクバク状態で。

・ ・ ・ ・ ・ って、黒子くん家って、こっち方向じゃなかったような...

あ、でもでも、せっかくの黒子くんからの声掛け、断れない、し、それに、断りたくない!







初めて、二人っきりになれるんだもの!!!!!!








というわけで、

夕焼けを見ながら、二人で並んで帰ることに。





・ ・ ・ いやぁ、どうしよう...頭、真っ白で、話すことが見つからないよぉ...








さん。」

「は、はい。」


少々上ずり気味の声で返事をしてしまったけれど、

そんなことには気にも留めず、黒子くんは話をすすめていく。



さんって、ミニバスやってたんですね。」

「え?あ、ひょっとして、さっきの話、聞いてたんだ。」


「えぇ。まぁ。」

「ははは〜〜。やだなぁ。恥ずかしいじゃない。黒子くんなんか、バスケめっちゃ上手いし...」


「いえ、そんなことないです。さん、バスケやらないんですか?」

「わたしね、怪我があまりにも多くて、突き指とか捻挫とかばっかやってて、

せっかくのスタメンも降ろされちゃったりして、自信なくなってしまってね。

バスケは好きだけど、もう、するのはいいかなぁって思って...」


「そうなんですか。何だかもったいないですね。」

「・ ・ ・ ・ ・ え゛???も、もったいない???わたしが〜?」



黒子くんの意外な言葉に、

わたしも思わず声が大きくなってしまって、それに反応した黒子くんはわたしの方を見て、

かすかに微笑んで見せた。






「はい。さん、なかなかセンスあると思いますよ。

僕もいろんな人と一緒にプレーしてきましたけど、女の子で、あれだけ周りに気を配れる人が

いるとは、正直思わなくてびっくりして見てました。

さん、結構動体視力あるほうでしょ。」

「え??あ、そ、そうかも?...いや、どうかなぁ...」


「ボールに対する反射神経も、そんなにブランクがあるようには見えなかったし、

何よりボールをよく見てますよね。特別な切り札があるわけではないけれど、

あれだけ周りを見渡せれば、他の人も動きやすいと思いました。

さんが男だったら、是非一緒にプレーしたいです。」

「・ ・ ・ ・ ・ ・ ちょ、ちょっと、黒子くん...誉めすぎだよ.....」





試合中、黒子くんが応援しに来てくれてるのには、気付いていた。

すっごく嬉しかったけど、現役の彼に見られるのはかなり恥ずかしかったし、

妙なプレッシャーみたいなのもあったし、正直、自分の思うようには出来なかったと思う。



でも、そこまで熱心に見てくれてたとは思いもよらなくて、

もう、どう反応していいのか分からない.....








「あぁ、すみません。ちょっと喋りすぎました。

返事に困ってしまいますよね。・ ・ ・ あ、良かったら、

そこの公園で、ジュースでも飲みませんか。喉が渇いてきちゃいました。」



時間、大丈夫でしたか?と黒子くんらしい気遣いにまたドキドキしながら、

わたしは、誘われるがままに公園の自販機でジュースのボタンを押した。


黒子くんのおごりだったのだけど...







ベンチをすすめられて、ありがとう、と言いながら座ると、

黒子くんも荷物を降ろしながら、すぐ隣に腰掛けてきた。





・ ・ ・ ・ ・ って、微妙に近すぎやしないですか???



あぁ、何だか今日は、ていうか、さっきから黒子くんには驚かされっぱなしだよぉ。







二人、同じリンゴジュースを飲みながら、

上空の三日月を一緒に眺める。




初秋を思わせる風が心地よく吹いてきて、

リンゴの甘酸っぱさと一緒に、緊張もほぐしてくれる感じ。








「落ち着きました?」

「え?あ、うん。」



心の中を見透かしてるような黒子くんの言葉に、また心臓が活発化してくる...



「・ ・ ・ だって、黒子くん、すごいこと言うんだもの...」

「いや、僕は、思ったことをそのまま言っただけですよ。」






意外にも、すっかり黒子くんペース。

これは、ちょっと話でも切り替えなくちゃ、と思い、頭を巡らせる。





「そういえば、黒子くん、卓球だったよね。」

「はい。初戦敗退でしたけど。」


「あ、応援に行けなくてごめんね。」

「同じ時間に、女子のバレーやってましたからね。」




ぅう、しまった。マズッた。

こんな話題じゃ、全く盛り上がらないじゃない。


あ゛〜〜〜っ、わたしのだアホ!(どっかで聞いた?)







「月が綺麗ですよね。」



え?と言いながら、再び空を見上げると、

薄っすらとかかってきた雲のせいで、ぼんやりと見える月が、

情景的で本当にとても綺麗だ。






「無理に話さなくても大丈夫ですよ。」

「・ ・ ・ く、黒子くん?」


「君がここに座ってくれてるだけで、僕は嬉しいです。」

「・ ・ ・ ・ ・ え?あの、、、えっと、、、」




黒子くんの言ってることが全く理解できず、

わたしはただ、とまどうだけ。


えっと、何だろう、、、え?それは、、、き、期待しちゃうよ?!








「僕、ずっと前から、さんのことが好きなんです。」







月を見上げながら、思いもよらなかった言葉が告げられる。








えっと、、、それは、、、つまり、、、

・ ・ ・ ・ ・ そういうことだよね...








まさかまさかの大展開に、わたしの思考回路は、ますますショート寸前状態...



でも、視線だけは、少し欠けた月を映している、クリスタルブルーの瞳から離せない。









すると、

無反応なわたしを察してか、ゆっくりと黒子くんは、わたしの目に視線を合わせる。








さん」




「黒子くん......」






自分でもとまどうくらいの消え入りそうな自分の声に、

ベンチに置いていた手が震えて少し動いた、そのわたしの手を、

上からそっと重ねるように、黒子くんの手が押えてくる。






瞬間的に、わたしは、その手の方へ顔を動かすけれど、

視界が暗くなって、顔を戻すと、唇に柔らかいものが触れた。








触れただけ、優しく触れてすぐ離れてしまったけれど、

黒子くんのストレートな気持ちが、わたしの中へダイレクトに飛び込んできた。







嬉しいのとあまりの衝撃とで、思わずわたしは、重なってない方の手で自分の口を押さえた。










「すみません。驚かすつもりはなかったのですが、どうしても気持ちを伝えたくて...

我慢出来なくて......」







「・ ・ ・ あ、えと、黒子くん。あの、すごく、嬉しい...」






わたしは、必死で、その言葉だけを一生懸命伝えた。







「え?」

「なんか、もう、びっくりしっぱなしで、何て言っていいか分からなくて、

何も言えなくて......ごめんなさい。って、謝るところじゃないよね。」


さん...」

「あの、えっと、上手く言えないけど、わたしも黒子くんのこと、ずっと好きでした...」


「え、ホントですか?」

「うん。だから、すごく嬉しくって...」








やった、と小さく発せられた言葉と同時に、わたしはフワッと抱き締められた。



わたしも心の中で、やった、良かった、と小さくガッツポーズをした。















*** Shooting to the moon










fin

by ゆかり 2010/09/13














《つぶやきという名のあとがき》

うしっ!

先月末にはほとんど完成してたのですが、なかなか最後が決まらなくて...
どうにか、ようやくupでございます。

同級生って、いいですね。
いつも近くで見ていられる、っていうか...
適当に距離もあって、、、ちょっとくすぐったい関係、みたいな...
あ゛〜〜〜、もう、体験できないけど...(ToT)


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
陳謝。