君は僕の
ぼくはきみの
***power spot
「明日、大事な試合があるんだ。」
「へぇ。じゃあ、いいところ、連れて行ってあげよっか?」
はクラスメイト。
女の子の中では、僕にとっては結構仲の良い方だと自負していた。
というより、彼女は、僕にとって、"勝利の女神"だった。
試合の前日、と結構長く話が盛り上がったり、
話しはしなくても、目が合った時に笑顔で返してくれたりしたときは、
必ず試合はスムーズに進み、僕はもちろん、チームをも勝利へと導いていた。
もちろん、ただの偶然なんだろうけど、これだけ続くと、
良いことではあるし、信じたくなるもので。
占い師の姉さんの影響もあってか、自分の中で、勝手にそんな
"ジンクス"めいたことを作り上げていた。
「え?それって、どこ?」
「ふふふ。ナ・イ・ショ」
いかにも楽しそうに、人差し指を立てて、クルッとターンしてみせる。
そんな君に、ちょっとドキッとしたなんてのは、もちろん"ナイショ"だ。
「へぇ。気になるじゃない。なかなかも、誘導上手かったりして。」
「え〜?何それ?!何だかな〜。連れて行ってあげるの、止めよっかな〜。」
「フフフ。ねぇ、そこって、結構遠いの?」
「う〜〜〜ん、電車で二駅だけど。」
「いいね。行ってみようかな。」
「え?部活はいいの?」
「君に誘ってもらって、断るわけにはいかないでしょ?」
気持ち、強引にすすめていく。
身体も慣らしたいけど、いい気分転換にもなりそうだ。
手塚には、上手く話しておこう。
それに。
彼女は、とっても嬉しそうだ。
荷物を持って一緒に駅へ向かい、の言う電車に乗る。
目的の駅で下車。それからバスに乗って20分くらい揺られて、
着いたところは、小さな神社の前だった。
「へぇ。ここ?」
「うん。そうだよ。こっちこっち!」
彼女に案内されて、長い階段を上っていく。
辿り着いて目に入ってきた建物は、古そうだけれど趣のある佇まいで、
神聖な雰囲気のある、小さくても堂々としたものだった。
「ひょっとして、"困った時の"なんとか、ってヤツかな?」
「ハハハ。それもちょっとあるかな。」
すぐ近くにある手洗い所で手を清めて、本殿に向かい、
お賽銭を入れて、一緒に柏手を打つ。
二人の放った音も、この凛とした空気に響いて、とても心地いい。
ここ最近、忘れかけていたような、それでいて、新鮮な感覚。
身も心も洗われるようだ。
に感謝しなくちゃ。
「ここね、知る人ぞ知る、"パワー・スポット"なんだって。」
なるほど。
パワー・スポット。
いつかの朝の番組で、ちょっとした特集組んでやってたっけ。
に言われて納得した。
ここに来て、僕が感じ取った雰囲気も、そして、
彼女の思いやり、とか、気遣いとか、優しさとか、それから......
君も、僕と同じ気持ちだって、思ってもいい?
「向こうの方、行ってみようか。」
僕が指差した方には、また別の塔が建っていて、
見晴らし台のようになっていた。
ずっと上まで階段も付いていて、
三階くらいまで上がれるようになっている。
「うわぁ〜〜〜〜〜っ!」
から、思わず、の声があがる。
最上階まで来ると、さすがに思っていたよりもずっと壮大な光景が
目に飛び込んでくる。
360°の大パノラマ。
あまりの大きさに、吸い込まれそうだ。
これだけでも、またパワーがもらえる気がする。
でも今はさらに、すぐ側に、君がいる。
「空の色も、すごくきれいだね。」
「ありがとう。こんな素敵なところに連れてきてくれて。」
「うううん。わたしも来てみたかったし。」
赤く染まった景色を眺めるの横顔を逃さないように見つめる。
彼女の顔も、心なしかほんのり薄紅色に見える。
少しずつ日も陰ってきて、時折強めの風が吹いてくる。
靡く髪を押さえながら、顔を風に向けて仰ぐようにしてみたり、
避けるように俯いてみたりしている。
そんな彼女がとても美しく見えて、愛しいと思う気持ちが込み上げてくる。
そして、どんどん膨らんで溢れそうになる。
思わず漏らしてしまいそうな溜め息をグッと堪えながら、
すぐ側にいるを見つめ続ける。
彼女を振り向かせたい。
彼女を独り占めしたい。
「」
瞳が合う。
思わず口から突いて出たのは、自分でも驚くような一言だったけど、
お陰で、彼女の視界も独り占めだ。
瞳がキラキラして、とても綺麗だ。
愛しくてたまらない。
ふいに、僕の視線に居たたまれなくなったのか、
照れたように俯いてしまったので、僕はすかさず、
の顎へ指を持っていき、強引に上を向かせて、口びるを重ねた。
"好きだよ"
僕にとっては、君が
君の笑顔が
僕の"パワー・スポット"
fin
by ゆかり 2010/04/05
《つぶやきという名のあとがき》
ようやく第二作目。
これまた、一気に書き上げた作品です。
流行りの"power spot"をテーマにしてみました。
なぜか、二作とも、右揃えのお話になってしまった。。。
ま、んなことはおいといて。
ちょっと前の夜中の三時ごろ、目が覚めて、
うつらうつらとしながら、このタイトルを考えていたら、
急にいろいろ浮かんできて、出来あがっちゃいました。
細かいところはかなり修正しましたが、
ほとんどの流れは、その、夜中の丑三つ時に完成。。。(苦笑)
いや。時間に意味はありません。。。>汗々
"君が僕のパワー・スポット" これが、もちろん、キーワードになってますが、
ちょっとベタでした?あははっ。
書き始めは、かなりヘタレな周助さんになってしまったので、
男らしくするのに、実はかなり苦労しました。
って、男らしくなってる?!?!?!?!
初めての、不二くんsideのお話でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
陳謝。