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わたしとは、放課後、バスを乗り継ぎ、青春学園までやってきた。この時間だったら、きっと不二くんは部活中だろう。帰宅する生徒もいるけれど、まだ校内は賑やかだ。にしても、うちの学校と違って、さすが私立、それも青学だし、なんか佇まいが凄いなぁと思っていたのだけれど、さあて、不二くんをどうやって探すか、それが今のわたしたちの問題だった。

「不二くんって何部だと思う?」
「さあ。何となく色白だったし、文化系かなぁ。」
「よし。手当たり次第に、声掛けて聞いてみよっか。」
「え?」

とわたしが一瞬戸惑った拍子に、はもう青学の一人の生徒に声を掛けていた。思いっきり他校の制服を着て、いきなり人を尋ねて、これって傍から見れば絶対怪しいよなぁ、とは思ったけど、の度胸に尊敬の眼差しを送りながら、反応を窺っていた。

「なんかさぁ、よくは分からないけど、結構不二くんって有名人っぽいよ。みんな知ってるみたいな感じ。テニス部だって。テニスコートも教えてもらったから、行ってみよ。」
「へぇ。」

わたしの鞄には、手作りのクッキーが入っていた。こんな突然来て、ちゃんと相手をしてくれるのだろうか。ある意味、迷惑な存在なんじゃ、とも思いつつ、でも、やっぱりどうしてもその迷惑掛けてしまった分を謝りたくて、意を決してテニスコートへとと一緒に足を向けた。

テニスのことなんてよく分らなかったけど、とってもきれいに整備されているコートだなぁと、素人ながらに感じた。そして、そのコートの周りには女子生徒でいっぱい。自分の学校では見慣れない光景に、ちょっと面喰ってしまっていた。そんな中、ふとコートへと目をやると、何人かラリーをしているところだった。その中で、一際しなやかな動きをする人がいた。動きがとても綺麗で思わず見とれてしまっていたけれど、よくよく見れば、何となく見たことが...

「あ、不二くん。」
「え?どこどこ?」

ほら、あそこ、とわたしは隣のに示した。間違いない。よく見かけていた柔らかい笑顔ではなくて、真剣な表情だけれど、あの背格好は不二くんだ。てっきり文化系かと思ってたので、あんなに激しくプレーをするとは思いもよらず、ますます見惚れてしまっていた。

すると、そこへ、これまた元気のいい感じの男の子が、ぴょこんと走って、というより、飛んでやってきた。

「ねぇねぇ、君たち、都立中の子でしょ?」
「あ、うん、そうだけど。」
「ひょっとしてさあ、キミ、さん?」
「え?」

何だか随分馴れ馴れしく話しかけてくると思ったけど、まさか名前を当てられるとは思わなくて、おまけに、当ったり―、と言いながら、またぴょんぴょん飛んで行ってしまった。
と思ったら、また戻って来て、

「不二でしょ?呼んでくるから待っててねん。」

と言って、また飛び跳ねながら行ってしまった。

何で分かったんだろう、と頭の中は疑問符だらけ。全く状況のつかめないわたしに、もうーん、と首を捻りながら、二人で顔を見合わせて考え込んでいたら、不二くんが、やぁ、とタオルを首に掛けながらやってきた。

「また会えるとは思わなかったよ。どうしたの?」

と、不二くんは汗を拭きながら話しかけてきた。

横で、ほら、、とが促すので、わたしも思い切って鞄から包みを出した。

「あの、これ...今までご迷惑掛けてきたお礼です。ほんの気持ちなんだけど。えっと、一応手作りで...」
「あぁ、ありがとう。嬉しいけど、僕はそんなたいしたことはしてないよ。ただ案内してあげただけだし。」
「で、でも、あの、二回とも、本当に助かったんです。嬉しくて。どうしてもお礼が言いたくて。」

そう言いながら、一生懸命不二くんに包みを差し出すと、

「じゃあ、せっかくだから、有難く頂くよ。」

不二くんはそう言って、いつもの柔らかい笑顔を向けながら、そのわたしが作ったクッキーの包みを受け取ってくれた。そして、

「ねぇ、時間あるかな。ゆっくり見てってよ。もし良かったら、一緒に帰らない?」

えっと...ということは、一緒に帰るということで、えっと...と、わたしは思考回路が寸断しているみたいだった。すると、横では、が、じゃあ、わたし、先に帰るね、なんて言ってるし。いや、それは困る、わたし、帰れないし、そう思ってたら、

「へぇ、キミのお友達いい子だね。キミのこと良く分ってるじゃない。」
「え?え?えっと、わ、わたし...」
「大丈夫。僕に任せてくれないかな。僕ならキミを迷わせたりしないから。」

そう言いながら、不二くんはわたしの手を引いて、テニスコートへと歩き始めた。わたしもちょっと小走りになりながら不二くんの後を追った。






2012/02/10 by ゆかり







《つぶやきという名のあとがき》

ん〜、ちょっと中途半端だったかな?
ビミョ―な感じで終わってしまってごめんなさい。。。
基本、片思い→両想い手前くらいが好みなので。。。^^;
でも、きっと、この後は、周助くんが
ヒロインをしっかり守ってくれることでしょう♪
ちなみに、ゆかりは、方向音痴ではありません( ̄▽ ̄;

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
陳謝。