わたしは、青峰くんが好き。
でも、いつもいつも一緒にいるあの娘。
一体、青峰くんの何なんだろう...
*** 情報交換
桐皇学園に入学して早一ヶ月半。わたしは、すっごい人を見つけてしまった。
ちょうど雨の体育の時間、体育館を半分ずつ男女分かれて使うことになって、女子はバレー、男子はバスケをそれぞれやっていた。体育は二クラス合同だから、隣のクラスの子と一緒になるのだけど、まだ自分のクラスの男の子さえ、全員の名前を知らないのに、隣のクラスの子まで把握は出来ちゃいない。が、ふと目をやった隣のバスケ。一際目立つ男の子がいた。
もう、そのプレースタイルからして他の子たちとは全く違うのが素人のわたしにだって分かる。かなり攻撃的な感じではあるけど、周りを圧倒させるプレー、他の男の子たちはただその子の後を追うことしかできない。わたしも自分たちのバレーそっちのけで見入っていた。
すると、同じクラスの子であろう女の子たち5、6人が、「ぅわぁ、ほらほら、青峰くんよー。キャーっ、青峰くーん!」と叫び出した。へぇ、あの子、青峰っていうんだ、と思ったのも束の間、っせぇよ、ともの凄い殺気を感じるほどの目力と一緒に、低くドスの効いた声が響いた。というより、そんなに大きな声ではなかったのだけど、それでもちゃんとこちらへ届くほどの威圧感のある声だった。彼女たちも、もちろんわたしもちょっとひるんでしまったけど、でもあのワイルドな感じ、やっぱり惹かれてしまう。
帰宅部のわたしはそれからちょくちょくバスケ部の練習を覗いてみたりしてたのだけど、気になる子がもう一人。青峰くんは、その子のことを「さつきっ」と名前を呼び捨てにしていた。そう。桐皇男バスマネージャー、桃井さつきさんだ。
桃井さんとわたしは同じクラス。始めは分からなかったけど、男バスの練習を見に行ってる中で、桃井さんがマネージャーをしてるのを知った。同中の子たちの話によると、桃井さんは、前の中学校でも男バスのマネージャーをしていたことがあって、男バスのメンバーが一目置くほど、敏腕のマネージャーだったらしい。それよりも、そのメンバーの中に、”キセキの世代”って言われるすごい人たちがいて、さらにその一人が青峰くんで、と噂は噂を呼んで、二人ともちょっと注目される存在になっていた。
でも、わたしはクラスメイトとして普通に桃井さんと接しているつもりだ。確かにマネージャーとしては凄腕なのだろうけれど、普段は普通の女の子だ。家庭科とかでも、料理は苦手らしくて、卵焼き焦がしちゃったり、おにぎりも上手く握れなかったり。えへへ、と笑ってごまかしちゃうけど、そこも憎めなくってカワイイし。話しかけても普通に笑顔で応対してくれるし、とっても感じのいい人だと思っている。でも、確かに見た目は同じ女の子としても羨ましい容姿だと思う。スタイルはいいし、顔もカワイイ、というよりどちらかというと美人だし、それに髪もサラサラ。癖っ毛のわたしには本当に理想だ。でも、桃井さん本人は、そういうことには全く関心がないみたいで、結構マイペースで飄々としている。そんなところもいいな、と思っていた。
にしても。同じクラスにいても、たまに、「おい、さつき。」と青峰くんは普通にやってくる。わたしはわたしでドキドキしているのだけど、桃井さんはちょっと面倒くさそうに青峰くんの方へと歩いていく。なんか、チラッと、二人は幼馴染みらしい、っていうのは耳にしたのだけど、でも、実際のところ本当はどうなのか、わたしは気になって気になって仕方がなかった。
ある日の体育の時間、バレーの後片付けの当番に、ちょうど桃井さんと一緒に当たったので、わたしは桃井さんに思いきって聞いてみた。
「ねぇ、桃井さん、桃井さんって、あの隣のクラスの青峰くんと、付き合ってるの?」
すると、桃井さんは、ちょっと苦笑いしながら、
「んー、よく聞かれるんだけど、わたしと大ちゃ......あ、青峰くんは、付き合ってなんかないよ。ただの幼馴染、っていうだけ。」
「そうなの?にしては、青峰くん、よく桃井さんとこに来るよね。」
「ホント、わたしもいい加減にしてほしいんだけど、でも、なんかね、放っとけないっていうか...あ、だから勘違いされちゃうのかな。」
「うん。桃井さんも、気を付けた方がいいと思うよ。結構青峰くんファン、多いしね。」
「そうみたいよね。何でだろう。もうホント目が離せなくて、手が掛かるばっかりなのに...」
「フフフ。桃井さん、何だか、お母さんみたいなセリフだね。」
「あはは。そうかも。もう、ほとんど、保護者みたいだもんね。」
と、二人で笑いあいながら、バレーのネットやポールをせっせせっせと片付けていた。
「ねぇ、桃井さん、桃井さんは、じゃあ他に好きな人とかいたりするの?」
どう答えてくれるか、ちょっと気になったけど、これも思いきって聞いてみた。
「うん、いるよ。他の学校だけどね。」
「ぅわぁ、そうなんだぁ。へぇ、ねぇねぇ、どんな人?」
「んー、一言じゃなかなか言えないけど、カッコよくって、優しくって、でもどこか可愛くって、でもステキで...あ゛―――、もう、全部好きだなぁ。」
「へ、へぇ。桃井さんがそこまで言っちゃうって、相当ステキな人なんだね。」
「うん。もう、最高だよっ。」
夢見る乙女とはまさにこのことか、と思えるほど、ウットリしたうるうる目になってしまった桃井さん。初めて見る表情に、何だかわたしも嬉しくなって、もっといろいろ聞いてみたくなった。
「ねぇねぇ、ちなみにどこの高校?」
「えっとね、誠凛高校。」
「あぁ。あの、昨年できたっていう、新設校かぁ。」
「うん、そうなの。あぁ、また会いたいなぁ。」
ん?とわたしは思った。桃井さんがいた帝光中学から行った人で、誠凛高校って...
「ねぇ、桃井さん、ひょっとして、その人って、やっぱりバスケ部?」
「うん。確か、昨年、結構イイとこまでいってた高校だから、テツくんも入ってると思うけど。」
「へぇ、テツくんっていうんだ。ねぇ、その人って、ひょっとして、ちょっと影が薄かったりする?」
「うん、そうだね―――って、どうして知ってるの?」
「確か......黒子、くん?」
「そう。そうだよ、当たり!え?どうして分かったの?」
「いや、わたしの同中だった子が、やっぱり誠凛に行ってて、バスケ部に入ったんだ、って話ししてね、降旗くん、っていうんだけど、帝光ってすっごい強いんでしょ?そこから来たっていう子が、面白いヤツで、っていう話を聞いたことがあったの。」
ひゃぁ、そうなんだー、ンー、テツくん、元気かなぁ、と、何か今までの大人っぽい桃井さんとは印象が変わってしまうほど、キャーキャー状態になっちゃって、何かまた新しい桃井さんが見れて、わたしも嬉しくなってきた。と、そこで、わたしはイイことを思い付いた。
「ねぇねぇ、桃井さん、ちょっと相談なんだけど。」
「え?さん、何なに?」
「情報交換しない?」
「え?」
「わたしが、その、黒子くんの情報を、降旗くんからいろいろ聞いてきてあげるから。その代わり、っていうのも、ちょっと恥ずかしいんだけど......」
「え?どうしたの?」
「あのね......実は、わたし......青峰くんのことが、好き、で......」
すると、桃井さんは、パッ、と花が咲いたように明るい顔になって、
「オッケー。わたしで良かったら、青峰くんの情報、いっぱい教えてあげる。」
「ほ、ほんと?」
「うん。任せといて。情報仕入れるのは得意だから。って、大ちゃんのことなんて、嫌っていうほど知ってしまってるけどね。」
と、桃井さんは苦笑しながら、手を出してきて、わたしに握手を求めた。
「さん、ありがとう。これからも仲良くしてね。わたしのことは、名前で呼んで。”さつき”でも”さつきちゃん”でも何でもいいから。わたしもさんのこと、”ちゃん”って呼んでもいい?」
「うん。もちろん。」
fin
by ゆかり 2012/05/10
《つぶやきという名のあとがき》
す、すみませんっ。設定、テキトーですっ>汗々
某黒バス夢サイトさんにて、桃井ちゃんの友情話を読んで、いたく感動しまして。。。
わたしも書いてみたいなぁ、って思って、書いてみた次第です。
ん〜、どうだろ。。。桃井ちゃんになってますでしょうか。。。
何かご意見ございましたら、遠慮なくお申し付けくださいませ!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
陳謝。
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