貴方とだったら
いつだって
どこでだって、何をしてたって
すっごく幸せだよ!
*** Special Day! by Kagami
「ちょー、火加減、見てくれ。」
「おっけー!」
ハンバーガー担当、大我、ちらし寿司担当、わたし。
今日は、二人の記念すべき、交際開始一周年の日。
二人で出掛けよう、ってことで話してたんだけど、何しろ高校生同士。お互いお金ないから、手作りでいこう、ってことになったのはいいけど、結構材料費にかかってるのも事実...だって、大我ったら、思いっきり食費のかかるお年頃。なので、ハンバーガー用のパンはわたしが昨日のうちに自宅で作っておいた。今日は切ってはさむだけ。ちらし寿司のご飯も、田舎のおじいちゃんが作ってるお米だし、材料も出来るだけ安価で済ませてる。
「フフフ。わたしって、イイ奥さんになれそうだよね。」
「ケッ。何、自分で言ってんだよ。」
「だって、大食漢の大我のために、いろいろやりくりしてさ。で、こうして二人で一緒にご飯とか作れたら、いいだろうなぁ。」
「あ、言っとくが、俺、ご飯とか作んねぇからな。」
「え?なんで?いいじゃん、一緒に作ろうよ。」
「家事とかは任せる。ま、たまに作ってやってもいいけどな。」
「え〜?何なに?亭主関白、ってヤツ〜?似合わな〜イ!」
「ハッ。言ってろ。」
「えでも、わたし、結婚しても仕事続けるよ?好きな仕事ならやりたいしさ。」
「まぁ、そうなったら、その時だ。」
そう言って、薄めの丸いハンバーグをひっくり返す大我は、よく見ると、耳が赤い。へへ。照れてんのかしら...
何だかんだ言いながらでも、将来のことを冗談でも口に出来るって、何か嬉しい。確かにどうなるかは分からないけれど、もし実現できるのなら、って考えると、すっごく幸せな気持ちになれる。
そしてわたしはわたしで、味付けの終わった具を酢飯へと混ぜていく。これが終わったら、後は容器に詰めて飾り付けだ。
大我はハンバーグを焼きながら、レタスをちぎって水にさらしたり、トマトを薄く切ったりしている。彼女のわたしが言うのも変だけど、本当に手際がいい。さすが、一人で日頃からやってるだけはある。やっぱり将来は、一緒にご飯とか作ってみたいなぁ。
そうこうするうちに、ちらしずしも出来上がり、後はハンバーガーを挟んでいく。大我はいつもたくさん食べるから、大我用に10個、わたしは一つで十分。
さて、ハンバーガーも詰め込んで、飲み物は荷物になるから、外で買おうってことにして、後は果物の入った容器とお手拭きを準備したら、一緒に出発だ。
以前から行ってみたいと思っていた、小高い山の上にある公園。木々に囲まれているのだけれど、芝生の広がる広場はサッカー場ぐらいの広さがある。そして裏手には、テニスコート、そして、ちょっとしたバスケットのリングもあった。
仕度と移動に結構時間がかかったので、ここについた時にはもう結構いい時間になっていた。とりあえず場所だけ決めて荷物を下ろし、周りを二人で散策した。家族連れも結構多い、花見の時期は過ぎてしまったけれど、気候がいいのでバドミントンやキャッチボールをする人たちもあちらこちらに見掛ける。わたしたちは、ちょっと離れた池まで来ていた。
「ンー、結構気持ちいいな。」
「そうね。標高もあるから、空気もいいしね。」
「ふわぁ...朝から作ってたら、ちょっと眠くなってきた。」
「ゲッ。大我ー、せっかく一緒に作ったんだから、ちゃんと食べてよね。」
わたしが大我の背中をパンチする。でも、頑丈な背中はびくともしない。すると、大きな大我の手がわたしの頭の上に乗せられた。わたしが思わず目をつむったら、頭をわしゃわしゃ撫でられた。わたしは、やめてよ、と言わんばかりに大我の腕に飛びつく。すると、大我がギュ―っと抱きしめてくれた。
「...」
柔らかい低音でわたしを呼ぶ。見上げると、優しい表情で微笑んでいた。
散歩から戻っていざ昼食。さっきまでいささか眠そうだった大我はどこへやら。さっそくハンバーガーを取り出して、いっただっきまぁす、とガブリ。ん、うめぇ、なんて言いながら、美味しそうに食べる大我を見ながら、わたしも一緒にハンバーガーを口にした。
「・・・・・ わ、おいしい...」
「だろ?そりゃー、俺の味付けだからな。」
「うん。さっすが。あでも、わたしの作ったお寿司も食べてよね。結構自信あるんだからー。」
「あぁ、わーってるって。イイ匂いしてたしな。」
そういって、まずハンバーガーを一つ平らげ、わたしが取り皿に分けてあげたちらし寿司へと箸を運んだ。
「・・・・・ おっ、なかなかイケるじゃん。」
「でしょでしょー?これだけは日頃から手伝わされてるから。ちょっと自信作だよ。」
「・・・へぇ、うめぇよ。作ってもらうっていいもんだな。」
半分つぶやきっぽく聞こえた最後の言葉は、もちろん聞き逃さなかったけど、わたしは少し照れてしまって、飲み物へと手を伸ばした。
9個目のハンバーガーを食べていた大我が、わたしが口にしていたリンゴを見て、「あ、それ、俺にもくれ。」と言ったので、別のピックをリンゴに突き刺して、「はい。アーンして」って言ったら、大我は一瞬たじろいだ
「な、何やらすんだよ。」
「いいじゃん。今日は記念日なんだしー。特別ってことで。はい。アーン......」
大我はちょっぴり赤くなりながらも、アーンと口を開けたので、そこへリンゴを放り込んだ。そしたら、あっという間に一口でリンゴをシャカシャカと食べてしまった。
お腹もいっぱいになったところで、ふわぁ、やっぱ眠ぃ、と大我は言って、そのままゴロンと横になってしまった。わたしは後片付けをして、また座ってドリンクを飲んでいたら、ちょーやっぱ膝貸して、と言って、わたしの膝を枕にしてまたゴロンと寝てしまった。何だか子どもみたいだ、と思いながらわたしがクスッと笑ったけど、心地よい風も吹いて気持ちがいいのか、すぐに寝息が聞こえてきた。大我の寝顔を見ながら、ゆったり流れる時間に幸せを感じながら、わたしは大我の頭をほとんど気付かれないように撫でていた。
15分くらいして、わたしもそろそろ足がしびれてきた頃、大我の目がバチッと開いて、ガバッと起きたかと思ったら、ン―――と伸びをして、っしゃー、と言いながら持ってきた袋の中からバスケットボールを取り出した。早速やりに行く気だ。
リングのところへ行ってみると、小学生くらいの子のいる3人親子が遊んでいた。小学生にしてはちょっと高めのリングだ。バスケをやっているのか、そこそこドリブルをこなす小学生の兄弟二人と、お父さんとの2on1でやり合っていた。大我はしばらくその光景を見ていたけど、ふっと向きを変えて、コンクリートの壁のある方へと歩いて行った。ん?と思いながら小走りについて行くと、その壁相手にリバウンドの練習みたいなのを始めた。ちょっとやって、ドリブルしながらわたしに近づいて、
「せっかく楽しそうなのに、邪魔出来ねぇしな。」
そう言ってフッと笑って、また見えない敵に向かってドリブルしたりしながら、一人でプレーしていた。付き合い始めの頃は、何かぶっきらぼうでそういうことも全然お構いなし、って感じだったけど、最近はそういう優しさとか周りに対する気遣いとかも垣間見えて、彼女で良かったなぁと思うことも増えてきた。
そうこうしているうちに、誰もいなくなって、大我はリングに向かって勢いよく飛ばしていき、思いっきりジャンプしてお決まりのダンク!やっぱりカッコいい。後ろ向きで片手でシュートしてみたりとか、普通のジャンプシュートしてみたりロングシュートしてみたり......すっごく楽しそうで、本当にバスケが好きなんだなぁって思いながら見ていた。
見ていたらわたしもやりたくなってきたので、大我のボールを取ろうと、ドリブルへ突っ込んだり、外したシュートのリバウンドをとろうとしたりしたけど......やっぱ、全然ダメ。歯が立たないとは、こういうことを言うんだなぁと思いながらも、大我を追いかけるのが楽しくて、キャーキャー言いながら動いていた。すると、大我の動きも少しゆっくりになって、わたしに合わせてくれるようになった。
「よし。取ってみろよ。」
そう言って相対する大我にちょっとドキドキしながら、わたしは一応構える姿勢をして、「いくよー」と言って大我のドリブルめがけて手をバンッと出した。すると、思ったよりも軽くボールは飛んでいった。「やったー」とわたしは言って、ボールを取りに行った。「じゃ、今度はが攻撃しろよ」というので、「いいよ。一応これでもミニバス経験者だしね。いくよっ」そう言って、久しぶりのドリブルの感触にワクワクしながら大我を交わしてシュート!ヘンなシュートだったけど一応入ってくれた。「へぇ、やるじゃん」って大我は言ってくれたけど、大我の足元にも及ばないのは百も承知だし。あーっ、バカにしてるー、と言いながらまた大我にパンチをしようとしたら、今度は腕を掴まれた。そして容易く大我の腕の中へ。
「、ありがとう。今日はイイ記念になったな。」
そう言って、わたしの額にチュッと音を立てた。
fin
by ゆかり 2012/05/08
《つぶやきという名のあとがき》
火神夢、2作目upです♪
今回は、ラブラブをテーマにして、思いっきり甘々な感じにしたくて
頑張ってみましたが、いかがでしたでしょうか。
最後がいつもながら中途半端ですみませぬ。。。
火神くんって、根は真面目だし、きっと彼女には優しいと思う。。。。。
んだけどなー。どうでしょうか。。。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
陳謝。
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