*** 予鈴10分前








予鈴10分前。わたしは、昼食を終え、購買にシャーペンの芯を買いに行って戻ってきた。それから自席に座り、次の授業の準備を始めかけたところへ、隣の席の火神くんに声を掛けられた。


「すまん、。ちょっ、ここ、教えてくんね?」
「え?何なに?・・・・・あぁ、ここかー・・・・・」
「次の英語、俺、ここ当たるんだよ。ちょー、わりぃんだけど。」
「えっとねぇ...ここは...って、火神くん、確か帰国子女じゃな・・・・・・」
「んあーっ、うっせー。マジ、文法とか全然分かんねぇし、そんなん、習ってねぇし。」
「え、あ、そうなんだー。」
「ちょ、ホント、ここってどうなんだ?早く早く。時間がねぇ。」
「あ、うん、分かった。えっとココはねぇ......」


そう言いながらわたしは、火神くんのノートと教科書を、指を差しながら覗きこんだ。ホンットに英語、苦手なんだねぇ...ノートの訳とかてんでなってない。ホント、これは苦笑するしかない。逆に心配してしまうほどだ。


教室の中は、雑然としている。周りのみんなは、他の生徒のことは全く気にしていない風だ。わたしたちもそんなに大きな声で話している訳ではないけれど、会話はこの教室の雑多の中でかき消されていった。

わたしはいささか緊張していた。好きな人の前だとこんな感じになるのは普通の反応だろう。火神くんはきっと気付いてないだろうし。ていうか、火神くん、こういうの鈍そうだもんなー。って言っちゃ失礼かしら。でも、”バスケが恋人”って地でいってる感じだし。異性とか、全然興味とかないんだろうなぁ。


っと、わたしが説明をしていると、火神くんがわたしの手を押さえた、というか、火神くん、手大きいし、わたしの手はどちらかというと小さい方だし、わたしの手から手首まで、火神くんの手の中にすっぽり収まっちゃう感じ。そして、座っても座高が頭一つ分高い火神くんは、わたしの顔を覗き込んできた。って、手を握られて顔を覗きこまれたら、どういうシチュエーションになるか、火神くん分かってやってんのかしら。わたしは心臓バクバクで、でも火神くんから目が逸らせなくて、もう半分パニック状態。握られたところが熱い。顔はもちろん火照っちゃってるし。って、えっと、どこまで説明してたっけ...


「あ、あの、火神くん?・・・・・・その、手・・・・・」
「・・・・・え?んあっ、わ、わりぃ・・・・・」


火神くんはそう言いながら、ゆっくりとかぶせたわたしの手から、自分の手を離していった。っと、徐に、

「なぁ、お前、付き合ってるやつとかいんのか?」
「え?いや、うううん、いないよ。」
「好きなヤツとかは......いるよなぁ...」
「あー、まぁ、うん、それなりにね。」


まさか、貴方だとは言えもせず、にしても、いきなり何を聞いてくるんだろうと、わたしはあまり役に立たない脳を、一生懸命フル回転させていた。


「え、えっと、火神くんは、気になる子とかいるの?」
「んあ?......あぁ......お前。」
「・・・・・へ?あ、あたし???」
「・・・・・・・・・・」


あまりにも衝撃的だったけど、ココはクラス内。あまり大声にならないようにお互い話してたけど、わたしの反応がヘンだったのか、一瞬周りの目が集まった気もしたけど、またすぐに元通りにざわつき始め、わたしは一つ軽く深呼吸をした。火神くんが黙ったままなので、今度はわたしが火神くんを覗き込んだ。


「えっと、火神くん、それ、冗談じゃないよねぇ。」
「んなこと冗談で言えるかよ。」
「だよねぇ......」


嬉しいのに、あまりにもびっくりして、どう応えて良いのか分からない。二人でしばらく無言だったけど、それを破ったのは火神くんだった。


「わりぃ。気にしないでくれ。」
「え?あ、いや、そ、そんなことないよ。えっと、何て言ったらいいか。わ、わたしも火神くんのこと...」
「え?ほんと?マジかっ!うっしゃー!」


そう言いながら、火神くんは、小さくガッツポーズをした。何だかわたしも気恥しくて、小さく笑ってしまった。



その後、放課後に一緒に帰る約束をした。








fin

by ゆかり 2012/05/01







《つぶやきという名のあとがき》

えっと。。。リクエスト第1弾?!
初の火神くん夢です^^♪
始めはどうなることかと思ったのですが、
書き始めると、結構スススッ、と進んでいきました。
セリフでてくると早いです。火神くん、分かりやすいので、結構書きやすいかも♪
 
いかがでしたでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
陳謝。